タイ税務改正動向:法人税上の貸倒損失の損金算入限度額の拡大

タイの法人税計算上、財務省令Ministerial Regulation No. 186により、不良債権の貸倒損失は債権額に応じた要件を満たすことにより損金計上が認められています。2021年2月にタイ内閣は当財務省令に関して、債権額の区分拡大等により貸倒損失の損金計上を容易にする改正案を閣議決定しました。今後正式な公布手続きにより適用可能となる見込みです。

   本改正はコロナウイルス拡大に伴う経済停滞により増加する不良債権の整理を促進し、また債権者の税務上の支援策の一環として行われものと想定されます。

改正案の概要は以下の通りです。

1)    適用要件ごとの債権区分の金額の拡大

区分

適用対象の債権額

損金算入の主な要件

現行規定

改正案

少額債権 (Clause 6)

100千バーツ以下

200千バーツ以下

適切に支払催促を行っているが返済が無く、裁判費用が債権回収見込み額を超えることが想定される。

中規模債権 (Clause 5 )

500千バーツ以下

2,000千バーツ以下

以下の①-④のいずれかを満たすこと

①債務者に対して債権回収の訴訟提起を行い、訴状が受理されている。

②他の債権者からの債務者への訴訟において財産分与の申立が受理されている。

③債務者に対する破産申立が裁判所より受理されている(清算人による申立も含む)。

④他の債権者からの債務者への破産申立において配当手続きが行われている。

高額債権(Clause 4)

500千バーツ超

2,000千バーツ超

明確で記録に残る形で支払督促をしているが、返済が無いこと。合わせて以下のa)b)のいずれかを満たすこと

a)上記「中規模債権(Clause 5 )条件①又は②(訴訟手続)」に加えて、他の債権者からの訴訟による財産分与請求に基づき差押命令が発行されている、又は初回の強制執行が実施されたが債務者の財産不足により回収額が無い。

b)上記「中規模債権(Clause 5 )条件③又は④(破産手続)」に加えて、債務者との和議が裁判所より承認されているか、第一回目の配当が行われている。

2)    金融機関が不良債権へ設定した貸倒引当金の損金算入

 タイ中央銀行管轄の金融機関が計上した貸倒引当金の損金算入を以下2つの要件のもと認めることとしています。

  • ローンの元金及び利息の支払いが360日又は12か月以上延滞している。及び
  • 債務者がタイ中央銀行の定める要件を満たしている。

 本改正は、2020年1月以降に開始する会計期間の法人税計算より適用可能となります。

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 (2021年3月作成)

免責事項

本記事は、作成日時点でのタイの法律等改正動向や一般的な解釈に関する情報提供を目的としております。内容については、正確性を期しておりますが、正確性を保証するものではなく、また作成後の法律改正等により最新の情報でない場合もあります。本記事の利用は、利用者の自身の判断責任となり、利用により生じたいかなるトラブルおよび損失、損害に対してMazarsは一切責任を負いません。個別の具体的な案件を進める場合には、事前に専門家へご相談頂きます様、お願い申し上げます。

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