会計論点解説 :固定資産の耐用年数変更
【設例】
A社は、12月末を決算期とし、「TFRS for NPAEs」(タイ国非公開会社向け会計基準)を採用している。
2018年1月1日、A社は海外から2百万バーツで機械Bを購入し、同日より使用を開始した。A社は機械Bの減価償却の会計処理に当り、耐用年数を5年(2018年から2022年末)、毎期均等に価値が低減し、耐用年数経過後の残存価格は無しと見積もった。よって年間の減価償却額は40万バーツ(2百万バーツ÷5年)となる。
2020年1月1日、機械Bの用途変更に伴いA社はその時点からの耐用年数を2021年末までの残り2年間と見積もった。
A社はこの耐用年数の変更をどのように会計処理・財務諸表に反映するべきか。
【回答】
企業は、将来または既に発生している事象であるが、情報不足等によりその金額を確定できない場合において、入手可能な情報に基づいて合理的な金額を見積もり、会計処理を行うことが求められます。これを「会計上の見積り」といいます。また企業は、事業活動や環境の変化に応じてより従前の会計上の見積りを変更して会計処理に反映することが求められます。
TFRS for NPAEs第50項及び62項において、「会計上の見積りの変更」の財務諸表への反映について、下記の通り定めています。
- 会計上の見積りの変更は、過年度の財務諸表に影響させず(遡及修正なし)、当期以降の財務諸表にて調整する。
機械の耐用年数及び残存価格や減価償却方法は「会計上の見積り」の一種であり、またそれらの変更は「会計上の見積りの変更」にあたります。
A社は、2020年に機械Bの耐用年数の変更した場合でも、過年度である2018年・2019年の財務諸表への遡及修正は行わず、当期以降(2020年以降)の財務諸表にて調整します。2020年の期首時点の帳簿残高をベースに、変更後の耐用年数により各期間の減価償却費を計算する形となります。各期の機械Bの減価償却や帳簿残高等は以下の通りになります。
| ①年間 減価償却費 | ②減価償却 累計額 | ③帳簿残高 (取得価格-②) | ④年間減価償却費 計算式 |
1年目・2018年 | 400,000 | 400,000 | 1,600,000 | (2,000,000÷5年) |
2年目・2019年 | 400,000 | 800,000 | 1,200,000 | (2,000,000÷5年) |
3年目・2020年 | 600,000 | 1,400,000 | 600,000 | (1,200,000÷2年) |
4年目・2021年 | 600,000 | 2,000,000 | - | (1,200,000÷2年) |
なお、本件設例回答はあくまで会計処理のための参考事例であり、法人税その他の取り扱いについて別途検討する必要があります。ご留意ください。
(2021年1月作成)
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