会計論点解説 :払込がされていない資本金の財務諸表での表示方法
会計論点解説 :払込がされていない資本金の財務諸表での表示方法
設例
2018年6月15日、1株当たり100バーツの普通株式20万株を発行し、登録資本金20百万バーツにてA社が新規設立された。同日、登録資本金の25%にあたる5百万バーツがA社の銀行口座に振り込まれ、払込済資本金は5百万バーツとなった。したがって払込の済んでいない資本金(未払資本金)は15百万バーツである。それ以降2018年12月までに資本金の払い込みは無かった。
2019年に入り、A社は株主に対し未払である15百万バーツについて支払いを要求した。2019年12月までに6百万バーツが払込された。2019年12月末の払込済資本金は11百万バーツ、未払資本金は4百万バーツである。
A社は、上記の未払資本金を2018年12月期及び2019年12月期の財務諸表上どのように表示する必要があるか?
回答
タイ公認会計士協会の2016年5月号ニュースレターによれば、登録資本金は財務諸表上に表示されるものの、払込済み資本金のみを財務諸表上に「資本金」としてカウントし、未払資本金を「資本金」にはカウントしないことになります。よって、2018年度では、A社に払い込まれた5百万バーツのみが資本金として計上され、残額の15百万バーツは資本金としては認識されないことになります。
また、未払資本金について、会社の取締役は株主へ支払いを要求することが可能で、株主は応じる義務があります。この要求により、株主の資本金払込義務が確定することから、要求額が株主資本の一項目として認識されることになります。しかし要求後も未払の部分は 純資産の控除項目となります。よって、引き続き払い込まれた資本金のみが、株主資本の残高を構成することになります。
上記踏まえて、2018年12月期、2019年12月期のA社の貸借対照表の株主資本の部分は以下のように表示されることになります。
①A社の2018年12月期の貸借対照表の株主資本
貸借対照表 | 注記番号 |
| (単位:バーツ) |
株主資本 |
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登記資本金 |
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(1株あたりTHB 100の普通株を200,000株発行) | 1 | 20,000,000 |
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払込資本金 |
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(発行した200,000株に対し、1株当た THB 25の払い込み) |
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| 5,000,000 |
株主資本 合計 |
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| 5,000,000 |
2018年12月期の財務諸表 |
注記番号 1.資本金 |
2018年6月15日、1株あたりTHB 100の普通株を200,000株発行、登記資本金THB 20,000,000として設立した。同日、株主は資本金の25%を払い込んだ。 結果、2018年12月期末現在、THB 5,000,000を資本金として計上している。未払い込みの資本金額はTHB 15,000,000であり、この金額を2019年度中に払い込むよう、株主へ依頼する予定である。 |
②A社の2019年12月期の貸借対照表の株主資本
貸借対照表 | 注記番号 |
| (単位:バーツ) |
株主資本 |
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登記資本金 |
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(1株あたりTHB 100の普通株を200,000株発行) | 1 | 20,000,000 |
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払込資本金 |
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| 20,000,000 |
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| (4,000,000) |
株主資本 合計 |
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| 16,000,000 |
2019年12月期の財務諸表 |
注記番号 1.資本金 |
2018年12月31日末時点で、THB 5,000,000の払込資本金があった。2019年度中に残額を払い込むよう、株主へ依頼したが、払い込まれた金額は一部のみである。払い込みが完了していないTHB 4,000,000は、財務諸表上、資本金から相殺して計上されている。結果、2019年12月31日現在の資本金額はTHB 16,000,000である。 |
株式会社は、株主の氏名住所・株式払込金額・保有株式数等を記載した株主リスト(BOJ5)を、①設立時、②株式異動の都度、③毎年の定時株主総会後に、商務省へ届出する義務があります。商務省事業開発局のウェブサイトによると、この株主リストは、払込済みの金額に基づき記載することとされております。よって、同時点の株主リストの出資金額合計と、財務諸表に表示される払込済資本金の金額は一致することになります。
参考リンク
http://www.fap.or.th/upload/9414/MfaAORDmKJ.pdf
https://www.dbd.go.th/DBD_WEB_2018/index_answer.php?tid=4056544
(2019年10月作成)
免責事項
本記事は、作成日時点でのタイの法律等改正動向や一般的な解釈に関する情報提供を目的としております。内容については、正確性を期しておりますが、正確性を保証するものではなく、また作成後の法律改正等により最新の情報でない場合もあります。本記事の利用は、利用者の自身の判断責任となり、利用により生じたいかなるトラブルおよび損失、損害に対してMazarsは一切責任を負いません。個別の具体的な案件を進める場合には、事前に専門家へご相談頂きます様、お願い申し上げます。