タイ税務改正動向 :納税手続き電子化支出に対する税制優遇

2019年6月、歳入局は、納税者及び税務当局の納税事務の効率化を促進するために、一定の納税電子化の投資及び費用支出について、法人税計算における追加控除を認める税務通達Royal Decree No. 683を発行しました。

通達の概要は以下の通りです。

1)  電子税務システム投資支出に対する税制優遇

  • 対象となる投資支出:
    • e-Tax invoice/receipt(※)を発行するための電子文書システム、プログラム、電子証明保存機器、コンピュータ及びその周辺機器
    • 源泉税、法人税、VATの電子納税のためのシステム、電子証明保存機器、コンピュータ及びその周辺機器
  • 優遇の内容:法人税計算において、当該投資に関わる税法上の減価償却費に加えて、投資支出と同額を支出年度に追加で損金算入することが出来ます。
  • 適用条件
    • 法人税納付義務を有する納税者であること
    • 2019年4月30日から2019年12月31日までに投資に関わる支払いを行うこと
    • 本通達発行以前には使用されていない機器であること
    • 歳入法65条第2項に定める減価償却資産であり、2020年12月31日以前に利用開始可能な状態である
    • タイ国内でのみ使用される機器であること
    • 連続する3会計期間以上使用すること
    • 投資支出の一部又は全部について、他の通達による税制優遇を利用していないこと
    • 投資資産の一部又は全部が投資促進法に基づき法人税減免の優遇を受けている事業で使用されないこと

2)  電子VAT処理対応レジスター投資支出

  • 対象となるレジスターの要件:
    • POSシステム及び電子決済システムと連動していること
    • 税法に準拠したTax Invoiceを発行可能であること
    • 販売及びサービス内容の詳細を記録できること
    • 本体価格とVATを区別して記録できること
    • VATに関する情報を電子的に通信可能であること
  • 優遇の内容:法人税計算において、当該投資に関わる税法上の減価償却費に
  • 加えて、投資支出と同額を支出年度に追加で損金算入することが出来ます。
    • 適用条件法人税納付義務を有し、かつVAT登録をしている納税者であること
    • その他は上記1)の適用条件と同様

3)  e-tax invoice/e-receipt関連サービス利用支出に対する税制優遇

  • 対象となる支出:e-tax invoice/e-receiptの作成・配布・保存サービス提供事業者に対する利用料の支払い
  • 優遇の内容:法人税計算において、支出金額の2倍を損金算入することが出来ます。

4)  その他

  • 上記の条件を満たさないにも関わらず優遇を利用した場合、遡って優遇が否認されるのみではなく、それ以後、本通達の優遇利用が認められなくなります。
  • 上記の税制優遇は法人税納税者自身の事業に供する支出のみ認められます。
  • e-tax invoice/e-receipt関連サービス提供事業者は、政府系機関であるElectronic Transactions Development Agency(電子取引開発局)からの一定レベルのシステム保有に関する認証を元に、歳入局より認可を受けることが必要とされます。

※e-tax invoice/e-receipt

 タイでは、VAT申告にインボイス方式(税法上の要件を満たす「タックスインボイス」を集計して納税額を算定する方式)が取られており、また原則として紙ベースの原本を利用することが求められ、VAT登録事業者の大きな事務負担となっています。しかしながら、一定の要件を満たすことにより「タックスインボイス」を電子化した”e-Tax invoice/e-receipt”を発行することが認められており、納税事務の簡素化が期待できます。

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 (2019年7月作成)

 

免責事項

本記事は、作成日時点でのタイの法律等改正動向や一般的な解釈に関する情報提供を目的としております。内容については、正確性を期しておりますが、正確性を保証するものではなく、また作成後の法律改正等により最新の情報でない場合もあります。本記事の利用は、利用者の自身の判断責任となり、利用により生じたいかなるトラブルおよび損失、損害に対してMazarsは一切責任を負いません。個別の具体的な案件を進める場合には、事前に専門家へご相談頂きます様、お願い申し上げます。

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